【荒木所長からのおたより】住みなれた家で暮らすために「在宅医療」とは

【伊勢地域ニュース2020.6月号より】

 こんにちは。少しずつ地域に馴染みつつある、新米所長の荒木です。伊勢赤十字病院という地域の中核病院から、地域に根ざした医療を行いたく6月に赴任し、夏という一つの季節が過ぎようとしており、本当に時が過ぎるのは早いなと実感しています。

 

「在宅医療」とは

 さて話は変わりますが最近、「在宅医療」という言葉をテレビや新聞で目にしたり耳にしたりしたことはないですか?医療は一般に「病院」で行われますが、在宅医療では「ご自宅などの生活の場(一部施設も含みます)」で医療が行われます。医師による定期的な往診や看護師、薬剤師、リハビリの先生などがお宅を訪問します。対象となる方は、加齢で足腰が弱ったり、認知症がひどくなったり、老衰やがんの末期などで動くのが大変な方などです。

「在宅医療」の良さ

 病院生活を経験された方はいらっしゃいますか?病院では治療が中心ですから生活感は少なくて、寂しさや不安を感じることもあったかもしれません。また今までなかった認知症の症状が出てしまったり、体力が低下してしまうこともあります。でも在宅医療では、生活の一部に医療が溶け込むような形になるので、生活リズムを崩すことなく過ごすことが可能になり、環境も変わらないので寂しさや不安も少なくて済みます

「在宅医療」の大変なところ

 そう聞けば在宅医療は素晴らしいとなるのですが、少し違います。

 在宅医療ではご家族さんが中心になって患者さんを対応することになります。患者さんの体調が悪ければ、ご家族さんも心配されたり不安になったりします。出かけようと思っても気になり、時間の制約も出てしまうかもしれません。

「在宅医療」という選択肢もあることを覚えておいてください

 なんだ結局在宅医療は大変なことばかりじゃないかと思ってしまいましたか?実は僕も今まで在宅医療は、大変で辛いものといったイメージを持っていました。もちろん楽しいものではないと思いますが、患者さんやご家族さんの様子を拝見したり、お話を伺ったりするうちに印象も随分変わってきました。心配や不安、大変さの中に充実した部分も沢山あるのかなと感じます。普段の診療から離れて往診に伺うと、逆に僕が元気や前向きな気持ちを頂くこともあります。

 ご家族さんだけでは抱えきれないときには、訪問看護の看護師さん、生活のサポートをさせて頂くヘルパーさん、皆さんを担当するケアマネジャーさんがお手伝いし、心配や不安を少なくできるようにします。僕は診療所に赴任して、彼ら彼女らの熱心さに驚かされてばかりです。自分の家族のように皆さんのことを考え、みんなで患者さん・ご家族さんの今について常に話し合っています。そして医療・看護・介護の各分野で、患者さん・ご家族さんの笑顔が見られるよう毎日頑張っています。皆さんがお元気なのが一番ですが、もし何らかの都合で通院が難しい状況になった時には、在宅医療という選択肢もあることを覚えていていただければ幸いです。

(文・伊勢民主診療所所長 荒木 潤)

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