医療生協発足60周年
~築き上げた信頼と歴史⑩~

津地域委員会ニュース きずな 2022年3月

加藤文人 先生(医師)

9か月に渡ってお送りしてきた『医療生協発足60周年』企画ですが、今月号をもって最終回となりました。取材・寄稿にご協力いただいた皆さまありがとうございました。
 さて、そんな企画の最終号を飾っていただくのは、いくわ診療所の加藤文人先生です。昨今の情勢も交えながらの鋭い切り口で、その思いを熱く語っていただきました。

職員・組合員に問います

患者の権利章典を発展させよう

 三重に医療生協が誕生して60年、私が医療生協で働くこと40数年。この間の医療の進歩はすさまじい。では、人々は幸せになったのか。不治の病―癌も6割の人が助かる時代、平均寿命も世界最長80余年。しかし、医療は細分化して臓器だけ治す専門医。人は黙って医師の前に首を差し出す以外にない。これからの医療の課題は、一人ひとりの人生を如何に充実したものにするため援助するものにならなくては。

戦場で傷ついた兵士を見るよりも、平和な社会を

最近の社会はずいぶん保守化した。安倍政治によるこの10年間、戦争準備が進み、民主政治の破壊が進み、公文書の改ざん、内閣による官僚人事支配、マスコミの操作、日本学術会議の任命拒否などなど。社会が大きく保守化している。
 最大の問題は、これほど憲法や法律を無視した政治に、国民が怒らないことである。このままなら、おそらくアメリカの要求を断れず自衛隊は戦争に…。大戦前の日本、無謀な戦争に「勝った」と喜び、戦争政策に関心を寄せなかった国民が今の日本に重なる。

地球の終末が危惧される今

日本の若者に「気候変動を防ぐために何をするか」と問うと「マイボトルを持つ」などの答え。環境活動家グレタさんは、「民主主義の力で権力者が私たちの声を無視できなくする」と答えた。今の日本では、自分自身で解決困難な問題は、自分には関係ないと無視されてしまうようです。情報は氾濫していても、どう考え行動するのかは教育されていません。
 この先も「良い」医療、介護を追及していくことは当然です。しかし、それだけではすまない情勢だと思います。

生協職員、組合員へ

 生協職員、組合員に問います。「今、最も大事な課題はなんですか」と。答えは上から与えられるものではありません。一人ひとりが考え、行動に移すときです。頑張りましょう。
 私の医療生協との出会いは、故・村田先生に「僻地医療と言うけれど、夜間休日は無医地区と変わらんぞ」と言われて。当時の津市は夜間休日、診てくれる医者はいなかった。

タイトルとURLをコピーしました